ウルフマウルフマン』

クラシックホラーとVFX. 怪優アンソニー・ホプキンスと名優ベネチオ・デル・トロ. まさに新旧が巧く融合した映画でした. まぁ脚本に目新しさは特にないものの、クラシックホラーの雰囲気を大事にした演出と狼男への見事な変身シーンに、ホラーサスペンスなのに妙に安心しながら見ることのできましたよ. 1941年の古典作品『狼男』のリメイクにVFXを融合させたこの作品. まず何と言ってもローレンスが狼男へと変貌していくシーン、特に学会の場で車椅子に縛られたローレンスの指が折れ曲がり、靴を破るほど足が膨らんでいく変貌ぶりは見応え十分でたまりませんでしたね. 古典作品では技術面で描くことができず、カット割で対応せざるを得なかったリアルタイムに変貌する様. これを脚本家アンドリュー・ケビン・ウォーカーと作曲家ダニー・エルフマンによる 『スリーピー・ホロウ』 に通ずる安定した調和を持つホラー要素の世界観の中でVFXでリアルに見せていく面白さ. まさに今後もこのような形でクラッシクホラーがリメイクされていく. そんな気がしましたよ. またそんな狼男の恐ろしさを、『ジュマンジ』や『ジュラシック・パークⅢ』よりも『アイアン・ジャイアント』や 『遠い空の向こうに』 が代表作であると断言したいほど大空に強い憧れを抱いている我らがジョー・ジョンストン監督がクラシックホラーの雰囲気を重んじた演出で見せてくれるところも面白いです. 特にロンドンの街中を走る狼男の顔をドアップにしたり、終盤での狼男同士の対決を少し早回しのような演出で見せてくれるところなど、妙に楽しかったりしましたからね. ただ本当にこの脚本は目新しさが特にないんですよね. ですからグエンがどうしたとか、アバライン警部が今後どうなるとかは基本不問のまま. 真犯人が誰で、どういう経緯とかも驚きは全く無し. でもだからこそ逆に目立ってくるのが怪物顔のベネチオ・デル・トロの人間から獣になる達者な演技であったり、怪優アンソニー・ホプキンスとの対峙シーンなんですよね. 特に現代版にリメイクされた『ウルフ』のジャック・ニコルソンよりは人間顔なのに、ジャック・ニコルソンよりも凶暴に見えるベネチオ・デル・トロの変貌ぶりはさすが. さらにラストでハンニバル・レクターの雰囲気たっぷりのアンソニー・ホプキンスと対峙するシーンでは、まるで新旧モンスター俳優対決みたいで、ベネチオ・デル・トロもいつかはアンソニー・ホプキンスみたいに「ニヤッ」と笑いながら猟奇殺人犯とか演じるのかなと思いましたよ. あっ、でも彼なら「ニヤッ」よりも「フッ」の方が似合うかも? てな訳で大空に強い憧れを持つジョー・ジョンストン監督だけにまさか狼男が空を飛んだりしないかと心配でしたが、そんなシーンなど全くなく、むしろ夜空に浮かぶ満月が常に狼男を見守っているかのように描く様に、この監督は昼夜関係なく「月」や「空を飛ぶ」など大空に関係することが大好きなんだなと思いました. 深夜らじお@の映画館 はこういう雰囲気の映画が好きです.